いい加減な恋のススメ
幸澤先生は「注目ー」と手を上げた。
「先輩の安藤先生からアドバイスがあるそうです」
「なっ……ちょっと、何を勝手に!」
彼のその言葉で生徒たちが期待の目で私の方を見る。う、わ……この人私がこういう場面苦手なのを知ってやってるんだ。性格悪すぎる。
何を言おうかと咄嗟に考えが出てこない私に彼は耳元で「何でもいいから言え」と囁いてくる。そ、そんなことを言われてもって、どこで話してんのよ!
困っていた私に助け船を出すように文化祭委員の木村さんが「泉ちゃんは文化祭で何やったの?」と質問をしてくれた。
文化祭か……
「確か2年の時はお化け屋敷したような気がします」
そう言うと隣で「わぁ、懐かし」と暇そうに欠伸をした。ん?あれ、そういえばこの人絡みで何かがあったような。何だっけ。
あ、思い出した。
「幸澤先生、お化け苦手でしたよね」
「あ?」
そう言うと一気に教室がざわついた。
「え!?マジ!?幸澤お化け無理なの!?ダッセ!」
「何か意外~」
「ギャップみたいな?可愛いかも」
「よっしゃ、これはもうお化け屋敷しようぜ!そんで幸澤1番初めの客にして思いっきり驚かせようぜ!いつもの恨みだ」
「お前らな」
恨みって何だよ、と彼の背中がズルッと棚を滑った。