いい加減な恋のススメ



幸澤先生は「注目ー」と手を上げた。


「先輩の安藤先生からアドバイスがあるそうです」

「なっ……ちょっと、何を勝手に!」


彼のその言葉で生徒たちが期待の目で私の方を見る。う、わ……この人私がこういう場面苦手なのを知ってやってるんだ。性格悪すぎる。
何を言おうかと咄嗟に考えが出てこない私に彼は耳元で「何でもいいから言え」と囁いてくる。そ、そんなことを言われてもって、どこで話してんのよ!

困っていた私に助け船を出すように文化祭委員の木村さんが「泉ちゃんは文化祭で何やったの?」と質問をしてくれた。

文化祭か……


「確か2年の時はお化け屋敷したような気がします」


そう言うと隣で「わぁ、懐かし」と暇そうに欠伸をした。ん?あれ、そういえばこの人絡みで何かがあったような。何だっけ。

あ、思い出した。


「幸澤先生、お化け苦手でしたよね」

「あ?」


そう言うと一気に教室がざわついた。


「え!?マジ!?幸澤お化け無理なの!?ダッセ!」

「何か意外~」

「ギャップみたいな?可愛いかも」

「よっしゃ、これはもうお化け屋敷しようぜ!そんで幸澤1番初めの客にして思いっきり驚かせようぜ!いつもの恨みだ」

「お前らな」


恨みって何だよ、と彼の背中がズルッと棚を滑った。



< 73 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop