いい加減な恋のススメ
「お化け嫌いなのって本当だったんですね」
職員室への帰りにそう言うと幸澤先生は「別に」といつもの口癖を口走った。
「肯定なんてしてませんけど」
「でもそうやって意地張るってことは怖いんですよね」
「まさか、30にもなってそんな情けないことになってたら誰でも否定はするでしょ」
「ホラー映画見れます?」
「見る価値ないね」
「やっぱり怖いんだ」
「……」
ヤバイ、まさかの弱点発覚だ。いつも虐められてる分なんだか嬉しい。お化けとかホラー映画苦手なんだ、何か意外。苦手だからあんまり見ないようにしてるのかな。
そういえば私の文化祭の時もなかなかお化け屋敷入ろうとしていなかったのを思い出して笑う。
すると馬鹿にされたのが気に食わなかったのか、彼は言い訳をするように口を開く。
「別に怖いとかじゃなくて、予想外なことが起きるのが嫌なんだよ。だから驚かされるのとか苦手」
「へー」
「おい聞けよ」
「聞いてますよ」
「馬鹿にしてんだろ」
「別に三十路の癖にってなんて思ってませんよ」
「滅茶苦茶馬鹿にしてんだろ」