いい加減な恋のススメ
目を向けるとそこには体育の授業の終わりなのか、小田切先生の周りに4人程の体操服の女子が群がっている光景が広がる。何だあれは。
「小田切先生、連絡先教えてよー」
「そうだよ、それに最近ずっと男子たちの方にいるじゃん。女子のテニスも見に来てー」
「実習生って文化祭とかどうなってるんですか?」
「私先生と一緒に回りたいなぁ」
何だか見てはいけないものを見てしまった気がする。隣で川西先生が「ありゃりゃー、これは凄い」と呟く。
「まぁ、普通に考えて顔もイケてて対応いい男がいたら女は群がっちゃうよね」
「ど、どうします?小田切先生困ってるみたいですけど」
「えー、別にいいんじゃないかな。だって女の子にあんなこと言われて気をよくしない人いないもん」
「……」
私は「そうなのかな……」と小田切先生の方を向く。小田切先生もそういう人なのかな。
すると困って明後日の方向を見ていた小田切先生と目が合う。
「あ、こっち見た」
「……」
小田切先生は女子生徒たちに「次の授業あるんでしょ」と言って柔らかく追い払うとこちらに向かってきた。かなり労力がいったようだ。
「ギリギリってばモテモテ~」
「そ、そういうんじゃなくて……助けてくださいよ」
「満更でもなかったのでは?」
「違いますよ、顔が困ってたでしょ」
「分からなかったなぁ」
「ご、ごめんなさい。気付きませんでした」
私がそう言うと「安藤先生は大丈夫ですよ」と笑った。