いい加減な恋のススメ
「そ、そういうことじゃなくて、とにかく私はあの人に勝ちたいんです!ギャフンと言わせたくてですね」
「ギャフン……」
「まさかこういうところで会うとは思ってなかったのですが、こうなったら高校の時に果たせなかった自分の本気を見せつけたいというか!」
「……」
小田切先生が驚いた表情で見ていることから自分は一体何を言っているのかと我に返り、「別に言い訳になってませんよね、すみません」と謝る。
取り敢えず宿敵である彼への気持ちを誤解されてなければそれでよい。
目の前の彼は「はぁ」と驚いた表情で、
「そうだったんだ、俺はてっきり」
「だ、だから……幸澤先生が好きだから小田切先生との約束を破ったとかじゃ絶対ないんです!」
そう言い切ったとき、何故か胸がギリッと締め付けられたような気がした。ん、何だろうか。
私が謎のその胸の痛みに頭を傾げていると小田切先生がクスッと笑いを漏らした。
そして、
「そっか、ごめんね。俺がちょっと心配性だったみたい」
「心配?」
「ううん、気にしないで。あ、駅着いたよ」
「……」
そこで私は無意識に駅まで送らされていたことに気が付いた。