いい加減な恋のススメ



「ご、ごめんなさい!小田切先生の家ってこっち方面ですか!?」

「いいよいいよ」

「違うんですね!」


あぁ、申し訳ないことをしてしまった。そんな私に彼は「本当にいいんだよ」と裏表のない笑顔で答えた。


「あ、じゃあそうだなぁ。1個だけお願い聞いてもらおうかな」

「え?」

「安藤さんの連絡先聞きたいんですけどいいですか」


いきなり敬語で話し出すから何かと思えばそんなこと、私の方が聞きたい感じだったというのに。
慌てて「はい!」と返事をして鞄からスマホを取り出そうとすると焦りすぎたのか、取り出した瞬間にスマホが手から逃げる。それに小田切先生が「危ない」と言って体を近付けて受け取ってくれた。

自然と触れ合ってしまった手に意識してしまって離す。小田切先生は自転車を1度止めると自分のスマホも取り出した。


「これって今さらですかね」

「うーん、どうなんだろうね。ていうか安藤さん、俺に敬語じゃなくていいよ?」

「っ……ごめんなさ……ごめん」


全く青春時代というものを送っていなかったせいか全てがこそばく感じてしまう。



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