いい加減な恋のススメ



取り敢えず電話番号と連絡先を交換した。何気に家族や親戚以外の人の連絡先が入ったのは初。


「いつでも連絡していいよ」

「う、うん……なんか悩みごとがあったら相談するかも、です」

「全然いいよ」


解決策を出せるか分かりませんが、とスマホを口元に当てると彼は嬉しそうに笑った。


「首の皮1枚繋がったって感じかな」

「何か?」

「……ううん、何にもないよ」


そのとき丁度私が乗る電車が来たので「遅くなるのも悪いし」と小田切先生は言うと私を駅へと送り出してくれた。
もう少し一緒にいたかった気もするけど、この歳になって駄々を捏ねるのも嫌なので大人しく従った。

小田切先生、本当にいい人だな。誰にでも優しいんだろうけど普通あそこまでされたらどんな女の子でも勘違いしちゃう。私も今その一員であるんだけど。

帰りの電車の中で交換した小田切先生の連絡先を見つめている。
何だか不思議な気持ちだ。ふわふわした柔らかい気持ちになって、そしてときたまドドドッと何かが押し寄せてくるように胸が高鳴る。

今まであんまり気にしていないようにしてたけど、私ってもしかして……本当に?



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