いい加減な恋のススメ
皆のお酒が進んだ頃、1人の子が「そういえばさー、」と、
「杏に聞いたんだけど泉が教育実習に行ってる学校に幸澤いるんだってね」
「っ……」
他の2人が驚いた様子で「え、マジで!?」とお酒が入っていたコップから口を外した。この子達も2年の頃に彼が担任のクラスだったのだ。
「ま、まぁそうだけど」
「えー、そんなことってあるんだ」
「転勤ってこと?」
「ついでに教育担当らしいじゃん」
「「マジか」」
「……」
私は肯定もせず烏龍茶を口にする。もぉ~、杏ってば口軽いんだから。いい相談役だけどそこだけが残念。
3人ともこの話にはやたらと興味があるらしく、テーブルから体が乗り出していた。
「で、どんな感じ!?」
「どんなって……」
「老けてた?」
「……あんまり、見た目は変わってないかも」
「じゃあ中身が変わってたの?」
「いや、中身も変わってない」
全く!、と後付けすると「だよねー」と全員が何故か賛同した。
「あれからってことは幸澤今何歳だ?」
「三十路だよ」
「結婚は?」
「してないっぽい」
彼女もいないみたいだけど、とは言わないでおいた。