いい加減な恋のススメ
高校の頃はしつこいぐらいに彼のことを引っ付き回していたし、鬱陶しく思われていてもしょうがない。
「まぁ、幸澤も大人だし、それはないと思うよ」
「逆になつかれてて嬉しくなってたって」
「なついてないよ!」
別にそういう意味でしてたわけじゃないし、と私は文句を紡ぎながら黙々と運ばれてくるお肉を食べていた。
話は更に進んでまた幸澤先生自身の話に戻った。彼は確かにいい加減な教師だったけど、こうして人の記憶に残るのは得意だ。
「なんか昔は自分よりも歳上過ぎるとおじさんって感じがしてときめかなかったけど、今30ぐらいの男を前にするとドキドキしちゃうよね」
「分かる分かる、幸澤顔だけは良かったから」
「どう?泉もドキドキしたりしないよ」
「……しないよ」
少し間が空いてしまったのは心当たりがあるからだろうか。私は敢えて気付かない振りをして返事をする。別にあの人に頭撫でられたってどうも思わないんだから。
そう私が心底「この話やめようよ」と思っていたその時、その話題はやって来た。
「でもさー、ウチのクラスにもいたよね、幸澤に本気なやつ」
私はそれに思わず箸を止めた。