いい加減な恋のススメ
「いーずみちゃん」
何人ものの女子生徒に話し掛けられた。
「幸澤、この仕掛けで驚くと思う?」
「うーん、でもあの人暗がり苦手だと思う」
「何で?」
「何か予想外のことが起きるの苦手らしくて。だから暗ければ何でも驚きちゃうと思うな」
休み時間中まで文化祭の準備で忙しい私は何とか間に合わせるために彼らの準備を手伝っていた。これであの人がちゃんと大きい教室を押さえてくれればいいんだけど。
「それより、昔の幸澤ってどんなの?」
「ど、どんなって、今とあんまり変わらないよ?」
「ふーん、そうなんだ。泉ちゃん幸澤のこと好きになったりしなかったの?」
「な、っ!?」
何言ってるの!、と私は驚いて腕を慌ててパタパタ動かす。最近よくされるこの質問。私ってそんなにあの人のこと好きみたいに見えるのかな。ていうか、他人からそう見えるってことは、実は私……
て、ナイナイ!それはナイ!
「あ、当たり前でしょ。好きになんかなりません。あんな人」
「そうなの?泉ちゃんの友達とかにもいない?」
「はい、いませんでした!」
私が勢いでそう言うと彼女たちは「そっかー」と顔を見合わせて頷き合った。
それがどうも不思議で私は首を傾げる。
「ほら、めぐ!告白してる人も少ないんだし、結果なんて分かんないじゃん!」
「でも……」
「そうだよ!勇気出そうよ!」
彼女たちの中に埋もれるように立ってきたその"めぐ"と呼ばれた女子高生は彼女たちの助言におどおどしく頷いた。
一瞬嫌なことが頭を過ったが私は見えなかった振りをした。