▼リセット。
*
涼ちゃんがいつも乗るバスが
土砂崩れに巻き込まれて生き埋めになった。
先週まで降り続いていた雨が原因らしい。
運転手、乗客ともに全員死亡。
涼ちゃんの手に握られていたケータイには私への送信メールが残っており、
ちょうど17時を示したところでその命を止めていた。
おばちゃんもおじちゃんも泣いていて、
お父さんもお父さんも泣いていた。
クラスメイトも先生もみんなみんな泣いていた。
透明な滴を止めようともせずに、ひたすら流して。
涼ちゃんの名前が、特に意味もなく何度も涙声で呼ばれた。
黙祷が捧げられている最中に声をあげて泣き出した子もいた。
―――私は泣けなかった。
涙なんて出なかった。