▼リセット。
約束したのに。
勉強を教えてくれるって。
部屋にいなかったらしばくんでしょ?
私、まだ部屋にいるよ。
ノートをカリカリと取りながら、
「遅くなって悪かったな。」と飛び込んでくるはずの涼ちゃんを待った。
先に勉強をしていたら、
「珍しくえらいじゃねーか。」と頭を撫でてくれるはずなんだ。
もし私が途中で寝ちゃったりしたら、またみぞおちにパンチを入れてくるはずなんだ。
「馬鹿!」って怒鳴って、
そんでオムライスを不機嫌に食べて、
でも「美味い」って言ってくれるはずじゃんか。
お母さんが「お葬式行くわよ。」と私の手を引く。
気遣わしげで、それでいて有無を言わせぬ強い力。
冷たいその指を思いっきり引き剥がして逃れた。
その時当たったお母さんの爪が私の肌に白い筋をのこす。
痛いハズなのに、痛くない。
「お葬式って何。
誰の。
涼ちゃんが行くなら行く」
叫んだと同時、誰かがヒュッと息を吸い込んだ。
悲鳴のような音だった。