▼リセット。












気付いたら、涼ちゃんが大きな写真の中で笑ってた。






涼ちゃん、と小さな声で呟くけれど、彼は何も返事を返さない。




いつも仏頂面だったのに写真の中の笑顔はありえないくらい嘘くさい。




以前トランプをやった時の罰ゲームだ。




私が勝って、涼ちゃんが負けた。





下した命令は笑顔でピース。




思った以上に満面の笑みで彼がカメラに指をつきだして。




似合わないって吹き出した。




笑いすぎてお腹が痛くなったっけ。




おばちゃんが「いい写真をありがとね」って泣きはらした目で笑う。




「本当に七海ちゃんにはお世話になったわ。」




「涼がいい人生を送れたのは

七海ちゃんのおかげだよ。」




「いっつも七海ちゃんの話してたものね。」





おじちゃんとおばちゃんが口々に何かを話し出す。





なにも頭に入ってこない。




音と口の動きがただ、ずれて混じって。




「言葉」になるまえに溶けて消えていく。
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