▼リセット。
今なんで自分がここにいるのかすらわからなくなって、
時折冷静になったり混乱したりの繰り返し。
ボーッと突っ立っていたら今度はお父さんに怒られて。
友達はみんな、私に悲しい目を向ける。
数珠がちぎれて散らばって。
たくさんの人に迷惑をかけて。
なのに、それを拾ってくれる人の中に今一番会いたい人はいなくて。
霊柩車、
涼ちゃんをどこに連れてくの。
火葬場、
やめてよ。
そんなに狭いところに涼ちゃんを入れないで。
時がどこでどう絡まったのかはわからない。
気付いたら私は、白い箱に縋り付いていた。
違う、やめてと叫びながら、
引きはがそうとする大人たちを必死に振り払っていた。
「七海!」
激昂したお母さんの声が、
私と涼ちゃんの名前を交互に呼びながら崩れ落ちるおばちゃんの姿が、
羽交い絞めにする大きな腕が、
幾多の雑音となってまじりあう。
張っていた何かが、切れた。