▼リセット。
涼ちゃんの仏頂面、
いつものふざけたやり取り、
叩くときに本当は手加減してくれる優しさと、
頭を撫でてくれる大きな手。
…制服に入ってた残りの飴玉を握りしめて。
『また後でな』
かすかに笑った、
大好きな横顔。
七海、と私を呼ぶ声も。
涼 ち ゃ ん は
も う い な い ?
「う………あ………っ…
っうああああああああ…ッ…」
目が痛い。
鼻の奥が痛い。
息が出来ない。
涙に、溺れる。
「涼ちゃん」
もう声は出なかった。
助けてよ、と
吐息が漏れた。
返事は、ない。
固い地面に膝をつく。
力の抜けた手が勝手に震える。
喉の奥から嗚咽を絞り出して、
もう二度と会えないと、何度も気付いては涙をこぼす。
息ができない。
苦しいよ。
助けてよ。
何度も、何度も
壊れたロボットみたいに同じことを叫んでは心を裂いて。
押し寄せてくる雑音はすでに耳に遠い。