▼リセット。
指一本でも動かせば気を失ってしまうんじゃないかと思うほどの、脱力感と頭痛。
やり場のないこの感覚に、意識が朦朧とし始めた、
…その時だった。
――――カシャンッ
「オイ起きろ。
いつまで寝てんだ…って七海!?」
唐突に止まった目覚ましと聞き覚えのある低い声。
じわり、耳に吸い込まれたその声は、
今まさに焦がれていたもので。
「……ッ!?」
ゆっくりと目を上げた先には、亡くした筈の人がいた。
もう会えないと思っていた人が、当たり前のようにそこにいて。
もう見れないはずの人がうずくまる私に駆け寄ってくる。
人は驚きすぎると声が出なくなるというけれど、
声どころか息すらできなくなった。
「大丈夫か?
具合悪いのか!?オイ!」
揺さぶられるがままに揺れて。
肩に食い込むほどの彼の指の痛みをじわじわと感じて。
もしこれが夢だったら、と背筋が凍るような恐怖に襲われて、
私は震える唇を必死にこじ開ける。
「…涼、ちゃん?」