▼リセット。




指一本でも動かせば気を失ってしまうんじゃないかと思うほどの、脱力感と頭痛。




やり場のないこの感覚に、意識が朦朧とし始めた、




…その時だった。





――――カシャンッ





「オイ起きろ。

いつまで寝てんだ…って七海!?」





唐突に止まった目覚ましと聞き覚えのある低い声。



じわり、耳に吸い込まれたその声は、



今まさに焦がれていたもので。




「……ッ!?」



ゆっくりと目を上げた先には、亡くした筈の人がいた。




もう会えないと思っていた人が、当たり前のようにそこにいて。




もう見れないはずの人がうずくまる私に駆け寄ってくる。





人は驚きすぎると声が出なくなるというけれど、



声どころか息すらできなくなった。




「大丈夫か?
具合悪いのか!?オイ!」




揺さぶられるがままに揺れて。



肩に食い込むほどの彼の指の痛みをじわじわと感じて。






もしこれが夢だったら、と背筋が凍るような恐怖に襲われて、



私は震える唇を必死にこじ開ける。




「…涼、ちゃん?」








< 26 / 101 >

この作品をシェア

pagetop