▼リセット。
「あ?なんだよ。」
ぎょっとして足を止める涼ちゃんに、学校に忘れ物した!と大声で叫んで。
じゃあ先に行ってる、
と言われないように先回りして、
有無を言わせず
涼ちゃんの腕をつかんで走った。
「…っ!オイ七海!?」
「ごめん、ちょっとついてきて!」
あと、2分。
あと、1分半。
さっきまで目の前に迫っていたバス停は徐々に視界から遠ざかる。
あと、1分。
あと、30秒。
何かをわめく涼ちゃんを無視して、、息が切れるのにすら気づかないまま必死に足を前に進める。
破裂しそうな心音だけが、
やけに耳に煩くて。
…後、1秒。
44分59秒の表示が、45分00秒へと変わる。
力が抜けた。
指の間から抜けた涼ちゃんの手。
さっきまで引っ張っていた反動か、お互いが反対方向にゆっくりとバランスを崩していく。
「う、わっ…!?」
ぐらつきながらも何とか体勢を立て直した涼ちゃんと
トサ、と軽い音を立てて尻もちをついた私。
涼ちゃんの呆然とした顔を見上げていった。
可笑しくなって、私は笑った。
「ごめん、やっぱりもういいや。」