▼リセット。
「絶対今日!」と
駄々っ子のように食い下がっては、涼ちゃんの腕を何度も揺らす。
17時に外に出ていてはダメだ。
どこか建物の中にいなきゃいけない。
安全な、どこかに。
鉄臭い肉塊になった涼ちゃんの姿。
遺影が笑うお葬式。
あんな思いはもう二度としたくない。
「お願い。
奢ってくれなくてもいいから。
自分で買うから。
…お願いします。」
何度目かに腕が前後に揺れて、
私の顔をちらりと窺い見た涼ちゃん。
ハア、とため息が耳をくすぐる。
「…お前、明日が何の日か覚えてねーのか?」
「え、大事な試合の日?」
練習を邪魔するな、と遠回しに怒られているのかと思い浮かんだことをそのまま口に出してみれば、
「ちげーよバカ!」と額を襲ったデコピン。
ふう、と鼻息荒く手を下げた涼ちゃんは、あきらめたように二度目のため息をつく。