▼リセット。




どうして、どうして。




叫んだ声は誰にも届かない。





苦しむ人たちのうめき声、消防車とパトカーの音、






じゅうじゅうと消火されていく火炎の最後のあがきが、一緒くたになって私の慟哭を隠す。






「こんなの、違う!」






また私は何かを間違った?






それが涼ちゃんをまたこんなに無残に殺してしまった?




砕けて白くなったスマホの画面、






かろうじて生きているのか、ちかちかと揺れる点滅は17時6分を形造る。






時刻表示とホーム画面の上を流れる緊急ニュースは、タンクローリー横転事故の事ばかりで。






土砂崩れも暴走車の事故も、「この」10月19日には起こっていない。






やけどが引きつり始めた手で頭を抱えた。




首から切れかけた懐中時計が、火の光で怪しく揺れる。




…と。




『…あーあ』




「…ッ!?」





ちらちら光る火の粉の向こう。



ふいに視界をよぎった影。




燃え盛る火炎のちょうど中央に、あの日の黒い神様がいた。




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