▼リセット。
「七海」
私の名を呼んで、
悪戯に口角を上げる涼ちゃんの顔。
優しく大きな手のひらで、
頭をなででもらう感覚。
また、他愛ない話をして
彼のとなりで笑いたい。
彼との思い出と願いが、失いかけた正気をギリギリで繋いで。
ぐっと呑み込んだ吐息の欠片は、鉄臭い血の味がした。
「…いやだ。
私は、諦めない。
絶対に正解を見つける。
無関係な人は死なせない。
………涼ちゃんも、死なせない。
「正解」が見つかるまで、私は今日を繰り返してやる!!」
黒い神様に向かって叫んでいるようで、
本当は気を失ってしまいそうな自分を奮い立たせていた。
今すぐにでもくずおれて、すべてを投げ出してしまいたい自分を、何とか無理やり消し去ろうと声を枯らした。
私の無謀な宣言を受けて、黒い神様は呆れたように手を振る。
『馬鹿みたい。まあ、頑張って。』
カチン。
いつも頭の中で鳴る音と似た、懐中時計の開く音。
―――息を吸い込んだ。