▼リセット。
何度も、何度も。
事細かにその日の涼ちゃんの行動を示したノートをその手に持って、また19日に戻る。
繰り返す死を決して無駄にするものかとどんな些細なことも死に物狂いに書き足してまた19日。
増えていく文字の量、
いびつな黒いシャーペンの痕が
煤けたようにノートを埋めて。
こうなったから次はこうしよう。
解決策を絞り出しては、失敗してリセットを繰り返す。
轢死、溺死、転落死,刺死。
…………何かを回避しようとするたび、
何かの危険物を排除するたび、
またそれが引き金になって、違った死が涼ちゃんを理不尽に襲う。
まったく知らない人が巻き込まれて死ぬ時があった。
私の知り合いや涼ちゃんの先輩、友達が巻き添えで死んでしまう時があった。
知らない人が死ぬときより知り合いが死ぬ時のほうが被害が少ないんじゃないか。
それが解決策なんじゃないか。
そんな法則性にすがったこともあったけれど、
ただ単にそれは「学校で死ぬ」か「外で死ぬ」かで、死の原因の規模が自然に違ってくるだけ。
【一人の人間が落ちただけの転落事故の巻き添えとタンクローリーの横転。
どちらが死者が多いでしょう?】
―――………たったそれだけの事だった。