▼リセット。
ーリセット05
*
カチン、と頭の中で音が鳴る。
いつもの歯車が欠けたような不協和音だったけど、不思議と不快感はなくて。
じりり、となり始めた目覚ましを静かにとめた。
日付が戻っていることに息をついて、私はもう一度目を閉じる。
久しぶりの二度寝。
布団がこんなに居心地の好いものだなんてことを、今の今まで忘れていた。
ぬくぬくとまどろむ8時前。
馬鹿みたいに枕に顔をうずめて、あったかいなとひとり呟いた。
…かちり。
長針が0を、短針が8を指示したと同時、ふすまが破裂したかのように勢いよく開く。
「オイ、起きろ!いつまで寝てんだ」
薄目越しに見えた涼ちゃんの顔。
愛しさ、悲しさ。
前回失ったものの感情を引きずりかけては「大丈夫だ」と自らそれを絶って。
彼の名を呼ぶ代わりに「んあ」と間抜けな声を上げて、あと五分と布団にくるまった。
「誰が5分も待つかボケ!
いいから早く起きろ!遅刻するぞ」
ドス、と鈍い音とともにヒットしたパンチ。
それほど痛くなかったけど大げさに「痛い!」と叫んで。