ぼくらのせかい
「え、今なんて?ハチ、」
「だからね、僕やっぱり、思い出したいんだ。なくした部分を。だから、治療する。」
ある日曜日、いつものようにブラック珈琲をハチに渡し、紅茶を飲んでいるとハチは意を決したように言った。
「でも、どうやって?」
「なんか先生に聞いたんだけど、アルバム見たり、昔の知り合いに話を聞いたりしてパズルのピースを合わせるようにしてゆっくり思い出すのがいいんだってさ」
ぐいっと珈琲を一気に飲み干すと、とりあえずアルバムから!と部屋を物色しだすハチ。
「でも、そういう治療って具合悪くなったりはしないの?頭痛とか…」
「なんか思い出したくないこととかだと本能的に拒否反応が出て、頭痛や嘔吐とかの症状が出たりするらしいんだけど…思い出したくないことなんてないし、大丈夫だよ」
「でも!ハチまだ復帰したばかりだし、そんなに急がなくても…」
「サチ、」
急に真面目に私の手を握るハチ。
「僕が目を覚ました時、覚えてる?」