ぼくらのせかい
雨宮幸子
は、私の名前。
ハチは私のことをサチ、と呼ぶ。
ハチ、嘉川八也は、私の大事なひと。
とてもとても、愛しいひと。
「サチ、学校行かなくていいの?今日朝練は?」
「今日は休むよ。ハチ今日検診の日でしょ?」
「そんな、僕のために休んだりしなくていいって言ってるのに…」
「いーの、私が一緒に行きたいんだから。ほら起きて、朝ごはん食べよう?」
そう言うと、ハチはありがとう、と柔らかく笑う。
あー今日もかわいいなあこの男は…
珈琲とパンとスクランブルエッグをハチの前に置き、私も向かいに座って紅茶を啜る。
私は苦いものは苦手だ。ハチはよくブラック珈琲なんて飲めるなあ、とぼんやりハチを見つめる。