ぼくらのせかい
「そんなことに私を巻き込まないで。それに宿題くらい自分でやりなよ。」
「雨宮さん、一人暮らしなんだー?僕と一緒だね!僕も親がほとんど家にいないからさー!ていうかお隣さんなのに話したことなかったね!」
「人の話を聞いてよ………」
私の言葉を聞き流して、嘉川八也はよく喋った。
いつの間にかソファに座ってくつろいでいるんだから、もう追い出すことも諦めた。
お茶なんてないしなー、カフェオレでも作るか、と珈琲の準備をしていると
「あ!珈琲?僕ブラックがすき!」
とにこにこしながら駆け寄ってくる男。
ブラックって…中学生なのに?と思いながら出そうとしていた牛乳をしまった。
「意外に大人の男でしょー?」
そう言ってふわりと男は笑った。
ふわふわの栗色の髪の毛に
色素の薄い瞳。
色白だし、女の子みたいだなあと思いながら
何気なくその髪に触れてみると、
「…っ!雨宮さん、笑ったとこ初めて見た……」
「え?」
自然と笑っていたみたいだ。
驚いて手を引っ込める。