ぼくらのせかい


季節が冬を迎えたある日、いつもの様にハチはソファに座って珈琲を飲んでいた。


「サチ、この部屋寒くない?暖房つけようよ」

「んー、でも毛布にくるまるのも気持ち良いよ?」


ほら、と毛布をハチに渡すと、


「じゃ、サチもおいで」



と毛布の中に私を招き入れた。



いつもより近いその距離にドキッと胸が鳴る。


「ハチ、ちょっとこれは近い……」

「サチ、」



いつもより真面目な声のハチに目を向けると、真っ直ぐに私を見つめるハチ。


ぎゅ、とハチに抱き寄せられたかと思うと
そのまま重なる唇。



「サチが好きだよ。僕の恋人になってよ。」






初めての、ハチとのキス。

甘い甘い、はちみつのような、

少し珈琲の苦みも感じる不思議な感覚。






私たち、兄妹なんだよ、とは言えなかった。




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