ぼくらのせかい
「……っ!」
ハチ、ハチ。
ハチを探さないと。
ハチが、私から離れていってしまう。
私を初めて愛してくれた、あの人が。
こどもながらに、本気で恋をした、あの人が。
ばたばたと玄関を出ると、
ハチの家の前に二人の大人がいた。
ハチの、ご両親。
ああ、会わないようにしていたのに……
海外から帰って来ていたのか。
と思いながら横をすり抜けようとすると、
「あの子になにをしたの?!」
突然大声を上げて腕を掴まれる。
驚いて見上げると、凄い形相で私を睨み付ける女の人。
ハチのお母さん、私のこと大嫌いだよね、当然。
「なにって…特に何もしてません。あまり親しくもないですし。急いでいるので離していただけませんか?」
今はご両親より、ハチだ。
ハチを探さないと。
「嘘つかないで!今八也が、思い詰めた顔であなたの部屋から飛び出して行ったのを見たの!あなたまさか八也と……」
「母さん、」
ずっと黙っていたハチのお父さんが突然お母さんを遮る。
この人、私のお父さんでもあるんだよなあとぼんやり思っていると、
「幸子さん」