不完全恋鎖
あの時、ナルは言った。


ーーー人の思考と宇宙の端っこは考え方は同じだと。


なんだか言ってる事随分と勝手な解釈だなと思ったけど、それでも今までで一番納得出来る答えだった。


だから俺はナルに言った。






ーーートモダチになろう。





ナルを側に置いて置きたかった。


ナルをもっと知りたいと思った。


けれど、同時に失う事への恐怖も感じた。


俺には昔、大切に思う人がいた。


その人は俺が高2の時に教育実習でやって来た。


俺は会って直ぐその人に心を奪われた。


一目惚れだった。


同時に彼女も俺を生徒ではなく、男として意識するようになった。


当時の俺はただ自分の思いをぶつけるばかりで彼女の立場なんか考えもしなかった。


彼女を先生としてではなく一人の女として欲した。


俺はある時、使われていない教室で彼女に求めた。


自分の置かれている立場に悩みながらも彼女はそんな俺の気持ちを全て受け入れてくれた。


俺達は何度となく放課後、関係を持った。


今なら彼女の気持ちも十分に分かる。


俺が求めれば求めるほど彼女を苦しめている事を。


ある時、


俺達の事が教師にバレた。


結果、彼女は実習を途中で終わらせる事になった。


教師になる道を絶たれた彼女は大学を辞め、実家のある田舎へと帰ってしまった。


いや、そうするしかなかったんだと思う。


夕陽が差し込む教室で彼女が教師になる事がずっとずっと夢だった。


漸く叶えるための第一歩を今、踏み出した所だと。


黒く澄んだ綺麗なその瞳は力強く輝いていた。


俺はそんな彼女を素直に美しいと思った。


なのにーーー


ガキみたいな俺の身勝手な行動から












彼女の夢を


未来を


希望を










奪ってしまったんだ。













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