散華
「きえぇぇっぃ!!」

 猿叫と呼ばれる気合を発し、平八郎は上段に振り被った刀を、男の額に打ち下ろした。
 が、男は咄嗟に己の刀を上げ、顔の前で落ちてきた刀を受け止める。

 ガキィ、という金属音がした。
 だが。

「!!!」

 平八郎の刀は、受け止めた刀ごと、男の額に食い込んだ。
 目を見開いた男の顔が柘榴のように潰れ、赤い布を被せたように、一瞬で真っ赤に染まる。

 仰向けに倒れ込む男を踏みつけ、平八郎はそのまま後方の男に突っ込んだ。
 刀ごとぶつかるように、相手の身体に刀を突きたてる。

 だが身体ごと突っ込んだのは失敗だった。
 動きの止まった隙に、背が熱くなった。

「くっ」

 突きを見舞った前の男を突き飛ばし、平八郎は反転しつつ後方に迫っていた男の胴を薙いだ。
 が、軽い。
 刀は敵の着物を掠っただけで、空を切った。

「平八郎!」

 叫びと共に、平八郎の前の男が真っ二つに割れた。
 身体の切断面から、向こう側に立つ熊之介が見える。

 言葉を交わす暇などないため、軽く頷くと、平八郎はすぐに体勢を立て直した。
 背中に濡れる感触がある。
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