夜空のコンビニ ~HとSの本~
「有難うございました~」

そして何度目かの溜息。いったい、どうしたのだろうか。

仕事は中途半端、お客様には心配される、まるで駆け出しのアルバイターみたい。下手をするとそれより酷いのではないだろうか。

――大丈夫かい?

「本当、何度目でしょうね。そう言ってもらうの」

――二七三一回。

「……数えてたの?」

――フォロー以外にすることもそうないから。

「暇人」

――人じゃないし。

「揚げ足取りはいいよ。お客さん、もういなかったよね?」

――さっきので最後。当分忙しい時間じゃないから。

「……じゃさ。少し相談に乗って」

――参考にならなくてもいいなら。

「駄目じゃん」

私は笑った。乾いた笑いだった。

一番初めに出たのは溜息。次いで沈黙。

躊躇うことなく出た言葉は、「私どうしちゃったのかなあ」だった。

――それはこっちが聞く。いったい、どうした?

「……わからない。何か、どうしたんだろう、ホント」

――仙人が下す問答をする気はない。

「厳しいな。でも、本当に……」

どうしちゃったんだろう。そう口にする前に、レジの上で突っ伏していたら、店内の最奥でテレビがついた。

私がリモコンをいじったんじゃない。そうなると、つけた人は一人。
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