夜空のコンビニ ~HとSの本~
どうしてかなあ。

何度目かの溜息を吐いた。

あれから一週間、何人もお客様が来て、その度に気を落としている自分がいた。

ちゃんと接客はできたと思う。
お客様への愛嬌も忘れていない。

だけど、どこか空ろだった。

「……ねえ、どうしたのかなあ?」

誰もいないコンビニで、レジの中で、私は虚空という天井を眺めながら問いかけた。

自覚なんてなかった。

ただなんとなく、浮かんだ言葉を吐き出して。

「どうして、あの人は」

あの人って、誰だろう。決まっているのにそうやって偽った。

「あの人の望む物は、ここにはなかったのかなあ」

ざわりとコンビニが揺れた。
レジがカタカタと鳴る。

まるで、怒っているみたい。

そんな事はない。

そんな事はない。

そんな事はない。

そんな事はない。

そんな事はない。

否定の声が警報機みたいに鳴り続けている。

お店は言う。胸を張って。

この中に、揃わないものは何もない。
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