自由を求めて
「どうぞ」
「ありがと」
相変わらず響は紳士だな…
「適当に座っててください、飲み物持ってくるんで。あ、またコンビニのだけど大丈夫かな?」
「うん、全然いいよ」
「って、なんでここにいんだ?」
「それは俺でもなく栞里さんにでもなく、そこの人に聞いて」
響が指差す方にはソファにもたれ掛かる黒髪の男、恭弥だった。
「…お前、もうここには来んな」
え?
「あの、どういう…」
「さっきは怪我してたから許したが、ここは部外者は立ち入り禁止だ」
部外者…?
「お前は俺達とは違う世界の人間だ。俺達なんかと一緒にいて、お前の親父が黙ってないんじゃねぇのか」
「っ、…それは、貴方には関係な…」
「お前も俺達からしたら関係ない、だから今すぐここを出てけ」
関係ないねぇ…
まぁ、九条家の娘っていう肩書きでベタベタされるよりはマシか…
「そうね、あたしには関係なかったわ。それならもう帰らしてもらうよ」
「え、栞里帰っちゃうの?」
「そこの人が来るなって言うんだからもうここには来ないよ、……二度と」
最後に呟き、椅子から腰を上げた。
「栞里さん、俺が送るよ」
「ううん、大丈夫。歩いて帰れるから、あ、あとこれ貰ってもいい?」
「え?あ、あぁいいけど…」
「ありがとう」
響からペットボトルを受け取って部屋を出る。
目の前の階段を降りると下に居た皆が一斉に集まって来た。