溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】


抵抗しようとして足を振った瞬間、足首に激痛が走った。

どうしたって今は歩けなさそうだ。観念してつかまっているしかないか。

涼しげな新城さんの横顔を間近で見ると、途端に自分が情けなく思えてきた。


「私……SP失格ですね」


いくら非番だとはいえ、マルタイの前で動きにくい格好をして、お酒まで飲んでしまうなんて。

そのせいで、十分な戦闘ができなかった。

途中で仲間が助けてくれなければ、マルタイを守ることができなかった。


「いや、よくやったよ、お前は。目の前で人が撃たれたって、冷静に敵に向かっていったじゃないか」


目の前で新城さんがふわりと笑う。

そんな顔を見たら、胸の奥がぎゅっと痛くなった。


「新城、そのまま病院に行け。議員はひとまずここで一休みさせてから、実家に帰ってもらうことになったらしい。それには俺たちが同行するから」


少し先で高浜さんたちと連絡をとりあっていた矢作さんが、こちらを振り向く。


「新城、チョッキ着てたとはいえ、一瞬気を失ったんだ。お前も無理しないで、ちゃんと医者に見てもらえよ。肋骨あたり、相当痛いはずだぜ」

「えっ」


涼しい顔してるけど、やっぱり痛いの?

それなのに、私を抱っこしたりして、大丈夫なの?


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