溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
「それって、俺のことが好きだから?」
新城さんのたくましい腕が、ぎゅっと私を抱き寄せるように力を入れる。
耳に熱い息がかかって、頬まで燃えそうになった。
「え……あ、の、それは……」
「それは?」
「そう……なのか、自分でもはっきりとはわからなくて……」
「なんだよ。期待して損した」
新城さんは残念そうに笑った。
そこに私を責めるような響きはなかった。
「いいよ。今日はもう難しいことは考えないで、しっかり甘えろ」
新城さんはそういうと、もう何も聞かなかった。
自分だって体が痛いはずなのに、私を抱いて歩き続ける。
新城さん。
こんなこと言ったら、あなたは私を軽蔑するかもしれません。
けれど、私を庇い、警棒を構えて前に出て守ってくれたあなたが……一瞬だけど、本物の王子さまに見えたのです。
……こんなでかくて可愛げのないお姫様、いないでしょうけど。
「ありがとうございます……」
小さな声でお礼を言うと、新城さんも「ああ」と小さくうなずいた。
安心するといつの間にか涙は止まり、心地いい眠りに落ちていった。