溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
「はい、どうぞ」
班長が顔を上げて返事をすると、ガチャリとドアが開いた。
そこから現れたのは、つり目のスーツを着た男の人。
「あ……!」
この人、あのパーティー会場で、ライトと警官隊を引き連れてきたハスキーボイスの……!
たしか、公安の人だったような。
「失礼する。……なんだ、今日は筋肉ダルマどもは全員出払っているのか」
筋肉ダルマって……もしや、先輩SPたちのこと?なんて失礼な。
「ええ。若いのは国分邸に出払ってますよ」
慣れた様子でうなずく班長。
「そうか。まあいい、あいつらに用はない」
つり目の公安は、こちらを見た。
「どうも。今回の事件を担当している、公安の篠田です」
公安の篠田さん……。
はっ。そういえば、初めてテロリストを投げ飛ばしたあとに、みんながすごく嫌そうな顔でそんな名前を出していたような。
「嫌われ者の篠田さんだ……」
「……思ったことを口に出してしまうSPを、俺は今初めて見たぞ……」
篠田さんが咳ばらいをし、私も我に返る。
「どうせあの筋肉ダルマどもが俺の悪口を言っていたんだろう。それより一ノ瀬巡査部長」
自ら名乗る前に階級までつけて呼ばれ、思わず背が伸びる。