溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
「事件が起きれば、一番に命が危険にさらされる。マルタイに傷一つでもつければ、関係各位から袋叩きだ」
「そりゃあ……SPはそういう仕事ですから」
「いや、お前はまだわかってない。SPになっていいことなんて、何もない」
「いったい何が言いたいんですか」
先輩なら、後輩を励ますものじゃないの?
自分だってSPのくせに、悪いところばかりを列挙して、いったい何がしたいんだろう。
またにらみつけると、新城さんは負けずに見つめかえしてきた。
「悪いことは言わない。俺とつきあえ」
「……はい?」
なに、その流れ。
呆気にとられて顔の力が抜けた。
ぽかんと口を開けた私に、新城さんが一歩近づく。
「俺の女になれよ」
誰の……女、だって?
わけがわからずに瞬きを繰り返していると、すきをつかれた。
新城さんは素早い動きで、右手を突き出す。
殴られるのかと思って咄嗟に身をかわすと、その手は私の背後の壁に叩き付けられた。
次の攻撃はかわすと見せかけ受け止めて、逆に投げ飛ばしてやる。
そう決心して息を飲むけど、新城さんは壁に手をつけたまま、至近距離の私を見つめている。
ん?なんだこれは?新手の心理作戦か?
警戒を解かずににらんでいると、新城さんは意外に真剣な表情で口を開く。