溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
動きを読むのは簡単だ。相手の武器は、振り下ろすか、思い切り正面から突くか。
目を見開くと、相手の肘の関節が、数ミリ上に上がる。
腕を上げ切る前に、武器を落としてやる。
そのつもりで松葉杖を、今度は竹刀のように構えた瞬間。
──スパン!
聞き覚えのない音がして、思わずそちらを振り向く。
すると、新城さんが右肩を押さえていた。
かろうじて警棒は持ったままだけど、押さえた箇所が血に染まっていく。
敵の手にはピストルが。どうやら、サイレンサーをつけているみたい。
新城さん……!
そちらに気を取られていると、ヒュッと空を切る音がして、ハッと振り返る。
振り下ろされると思いこんでいたアイスピックの鋭い切っ先が、胸の正面にあった。
ほとんど反射的に松葉杖を振り上げると、切っ先は私のシャツを引っかけながら、宙に跳ねあげられた。
相手は手首を押さえて後退する。
一方私も、注意がそれてしまったせいで、怪我をしている方の足に思い切り力を入れてしまった。