溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
新城さんは、最初に撃たれる前に、もう一人の敵をすでに倒していたみたい。
計三人の敵は動きを止めているけど、アイスピックを落とされただけの敵は、すぐにでも次の攻撃に移れそうな気配。
撃たれた新城さんと私じゃ、征圧するのは難しいだろう。
簡単に倒してしまったように見えるけれど、新城さんはびっしょりと汗をかいていて、いつもより顔色が悪い。早く手当てしなきゃ。
「走れるか?」
「う……置いていってください!」
「そんなわけにいくか」
新城さんは私の左側の腕をとり、自分の肩に回させた。
右手には松葉杖。これで、怪我をしている左足への負担が軽くなる。
新城さんと体が密着してしまっているけど、ドキドキしているような余裕なんて、今の私たちにはない。
「行くぞ!」
彼の掛け声とともに、敵の手がポケットからピストルを取りだす。
凶弾が放たれる前に、私たちは駆けだした。