溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
7.視線
「大丈夫ですか」
近くの病院で手当てを受けた新城さんは、意外にけろっとした顔をしていた。
処置室のベッドに座り、上半身裸の状態で、肩に包帯が巻かれている。
腕の内側には、抗生剤の点滴の針が刺さっていた。
「かすっただけだから」
たしかに、手当は簡単な縫合で終わったようで、弾丸が肩の中に入ったり、骨が砕けたりというようなことはなかったらしい。
あのあと私たちは現場から退避し、人通りの多い場所に出たところで、タクシーを拾った。
班長に連絡して事情を話すと、『あとのことは任せて病院へ行っておいで』と言ってくれたので、その行為に甘えることに。
治療が終わると同時くらいに班長と刑事部の刑事が来て、簡単な事情聴取をしていった。
そして誰もいなくなった処置室は、昼間の乱闘が嘘だったかのように静まり返っている。
「良かった……」
ほっと胸をなでおろす。
「心配してくれるのか?」
私をからかうようににっと笑う新城さん。