溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
「じゃあ、敵は私か新城さんを襲う、他の理由があるってことですか?」
個人的な恨みを買った覚えは……全くないとは言わないけれど、殺されるような覚えはない。
相手はサイレンサーまで持ち歩いているプロだ。
飛び道具を持っているにも関わらず、至近距離まで近づいてきたのは、現場が警視庁に近いからというのもあるだろうけれど、ターゲットを確実に捕えるためだとも考えられる。
いったいどうして、そこまで殺意を持って私たちを襲ったのか。
「ひとつ、提案があるんだが」
「はい?」
新城さんが真剣な顔をして言うので、考えるのをやめて耳を傾ける。提案って、なんだろう。
「人の恨みを買うような職業はやめて、俺と結婚しよう」
……またそれか。いい加減、脈絡のない口説きにも慣れて……ないけど、ちょっとは落ち着いて聞けるようになった気がする。
とはいえ、胸はとくとくと先ほどとは全く違うリズムを刻み始めていた。
「いいですよ」
冷静を装い、そう返事をする。と、新城さんは目を丸くした。