溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】


「……ん?」


気のせいか?誰かに見られているような視線を感じる。

ぱっと素早く振り返る。けれど、何の変哲もない住宅街の静かな道。通っているのは、サラリーマンや犬の散歩をする老人、保育園に向かう親子連れくらいだ。


「気のせいか」


昨日あんなことがあったから、過敏になっているのかもしれないな。

そういえば、昨日の新城さんと篠田さんの捜査はどうなったんだろう。何かわかったんだろうか。

わかったところで、公安の……しかもあの性格の篠田さんが教えてくれるとは思わないけど。新城さんだって、守秘義務があるし。


はあ、とため息をつく。

ほんと、SPなんてただのお飾りなのかも。せっかく命や体をはってマルタイを守ったって、得することなんてありゃしない。


「なんて、思っちゃダメだよね」


警察の仕事は、損とか得とかでするものじゃない。

気を取り直して駅の自動改札を通り、いつもの地下鉄に乗り込む。相変わらず、人が多い。

なんとか席を確保して座ると、地下鉄は動き出した。

ホッと息をついた瞬間、また違和感を感じる。


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