溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】


たしかに。不審者は敷地に侵入したわけではないし、何かを盗ったわけでもない。ただ見られていたとその辺の派出所に通報するだけでは、出動すらしてくれないかもしれない。


「……ちょっと待ってよ。変な音がしたんだよね?」


ぽとんって音がして、母は庭に出たと言っていた。


「何かを投げ込まれたのかもしれない。危険物だといけないから、へたに触らないで」

『大丈夫。怖くて庭にも出られないから』

「できるだけ早く、そっちに行けるように交渉してみる。少しの間待っていて。不安だと思うけど」


そう言って電話を切る。

さて、どうしたものか。


母にはああ言ったけど、私最近、怪我とか体調不良とか、テロリストに襲われたりとかで、ろくに仕事をしていない。

心配だけれど、今から家に帰りたいとはさすがに言いづらい。

考えた挙句、私は実家の最寄りの派出所に連絡を入れた。

実家の状況を話し、危険物を投げ込まれたようだと言えば、そこの巡査は早速バイクで出動すると言ってくれた。これで母も少しは落ち着くだろう。


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