溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】


バイクなら、パトカーよりは目立たない。何よりうちの家族は何も悪いことをしていないのだから、隠すことなどしなくていいんだ。

電話をすると、「帰ってきてくれるって言ったじゃない」と泣きつかれそうなので、手短にメールをした。そして葵に、大学の講義が終わったらすぐに家に帰るようにとメールを送る。

お父さんは、さすがに仕事を放って家に帰ることはできないだろう。

一息つくと、母から『ひとでなし』と泣いている顔文字の返信が送られてきた。


ちなみにお父さんは医療機器メーカーで仕事をしている。一応常務という役職らしい。

私が小学生の頃にはすでに管理職についていた父は忙しく、休日もあまり一緒に過ごせなかった。だけど、家にいるときはとても優しい父だ。


母のひとでなしメールが来てから、しばらく経った頃。

集中できないままパソコンに向かっていると、正午を告げるチャイムが響いた。

それと同時くらいに、また母からメールが届く。

すぐにそれを開くと、こんなことが書かれていた。


『危険物ではなく、盗聴器でした』


と、盗聴器?

一瞬目を疑ったけど、添付ファイルを開くと、たしかに写メの中の派出所の警官が、黒い盗聴器を持っている。


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