溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】


家をのぞいていた不審者に、盗聴器を庭に投げ込まれたということか。いったい、どうして。

父の仕事の情報を欲しがっている連中がいるのだろうか。それとも……。

とにかく、早く発見してもらって良かった。投げ込まれてすぐに気づいたから、たいした物音は拾われなくて済んだはずだ。


それにしれも、いったいどういうことだろう。

父や弟、それに私もいっせいに同じ時期から誰かに見張られているような気がするだなんて……。


偶然だとは言い難い。おそらく、私たち家族を誰かが見張っているんだろう。

母が心配だ。父も葵も、無事に帰ってくれなければ困る。

母や父の顔を思い出すと、突然めまいに似た感覚が起きた。


なんだ、これ……。


考えてはいけない。何者かがそう言って私の意識に蓋をしているみたい。

でも、なんとかしなければ。あの時みたいになってしまうのは、絶対に嫌だ。


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