溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
「おい、どうした? 大丈夫か?」
肩を叩かれ、ハッと我にかえる。
いや、我に返ると言うよりは、目を覚ましたと言う方が正しいだろうか。
寝すぎたあとのように、頭が重く、ぼんやりとしている。
ゆっくり上体を起こすと、そこには矢作さんが心配そうな様子で立っていた。
「私……」
「寝てたっていうか、気を失っていたように見えたけど。平気か?」
気を失った……?
「自分でもわかりません……」
矢作さんの顔を見ながら、今朝からあったことを順番に思い出した。
たしか、自宅に不審者が現れたという連絡が母からあって、盗聴器まで投げ込まれていたらしくて……。
その理由に考えを巡らせていたら、突然めまいがした。そこまでは思いだせる。
「ちょっと、実家でトラブルがあって……色々と考え込んでいたら、頭が痛くなって……そのあとが思い出せません」
「思い出せないって……大丈夫かよ。なんだか知らないけど、そんなにひどい頭痛がするなら病院に行ってこい」