溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
2.現場デビュー
数日後……。
出勤すると、すでに先輩たちがデスクの前に座っていた。
私は新しく与えられたデスクに、ちょこんと座る。
その横にはなぜか新城さんがいた。
向かいに矢作さん、その横は大西さん。
高浜さんの机だけサザエさんの波平さんの位置についている。
そして、反対側の壁には班長のデスクが独立。
ここ数日は訓練をしたり、警護計画の立て方について教えてもらったりしている。
本当は新入りが一番先に来て、掃除したり花を飾ったりするものなんだろうけど、ここにはそもそも花瓶がない。
そして先輩たちが警護に出てしまったあとに掃除をしているのだった。
だって、一番先に来て、そのあとで新城さんが来たら?
この部屋で二人きりになるのは避けたい。
「班長、今日の配置はまだ決まらないんですか?」
高浜さんが聞くと同時、班長のデスクの電話が鳴った。
「はい、特殊班」
SPたちに緊張が走る。
班長は一言二言話すと、受話器を置いた。
「高浜、矢作。すぐに国分元総理の警護に合流してくれ。先に別の班がいる」
「どうかしたんですか?」
国分元総理……たしか、何年も前に総理大臣をやっていた人だ。今は外務大臣として活動している。