溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
優しい声音が、鼓膜に響く。
彼の体温の中にいると、おそろしい寒さを忘れることができた。
まぶたを閉じてじっとしていれば、暗闇も少女の幻影も見えない。
ただ息をすることに集中していると、新城さんが私の背中をさすりながら言う。
「大丈夫。暗闇も狭さも、怖くない。俺たちは大人になったんだ。もうあの時のようなことは起こらない」
あの時のようなこと……?
「怖がらなくていい。俺がお前を、全身全霊をかけて守るから」
頭に疑念は残るものの、新城さんの声は素直に私の胸を熱くさせた。
何か質問をしようにも、息が苦しくてかなわない。
私はエレベーターが動き出すまで、新城さんに抱かれてひたすらじっとしていた。