溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
9.しかけられた罠
翌日。
私は実家のベッドで目を覚ました。
警察官になって自立するまで生活してきた部屋は、適度な落ち着きをもたらしてくれる。
さて、着替えて下に降りていこう。
あまりのんびりしていると、母に心配をかけてしまう。
結局あれから脳外科でCTを撮られ、異常はなかったものの、今度は精神科にかかってみてはどうかと言われてしまった。
エレベーターの中でパニックになったのも、もしかするとストレスが原因なのかも。
医者はそんな風に言ったが、私は今までストレスで病気になったことはない。
なんでもかんでもストレスのせいにしてしまうのは、医者の怠慢だと思う。
とにかく、エレベーターに閉じ込められて憔悴してしまった私の実家に、新城さんが連絡をとってくれた。
するとタクシーを使い、葵がすぐに迎えにきてくれた。
『原因はわからなくても、不安定な状態には違いない。ひとりにならない方がいい』
新城さんはそう言った。
私はおとなしくうなずいたけど、本当は実家になんて帰りたくなかった。
本当は、新城さんと一緒にいたかった。
聞きたいことがたくさんある。伝えたいことだって。
けれど、警護に戻らなければならない彼にわがままを言うことはためらわれた。