溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
大通りでタクシーをつかまえ、国分邸の近くに着いたのは、20分後のことだった。
「あれ……?」
住所を確認しながらついた国分邸は、高い塀に阻まれ、中の様子をうかがうことはできない。
ただ、母屋と離れがあり、その他にも倉庫らしき建物があるのが、屋根の様子で分かった。
うちの実家の倍以上ある、バカでかい屋敷だ。
その周辺は、テロリストが侵入しただなんて考えられないくらい、静かだった。
もしかして、すでにテロリストは制圧され、事件解決したとか?
なんて、そんなわけないか。そうだとしても、警察車両が一台も停まっていないのはおかしい。
だとしたら、さっきのアホ息子の電話は何だったんだ?
「もしや、からかわれただけじゃあるまいな……」