溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
そうだとしたら、どうしてくれよう。
新城さんが撃たれたと聞いて、ここまで手が震えて止まらなかったし、全身嫌な汗をかいてしまったじゃないの。
とにかく、乗り込もう。
からかわれたのだとしたら、文句を言ってやらなきゃ。
高い塀に沿い、門の方へ歩いていると……。
「んうっ!」
なに!?
突然、口元が何かで塞がれ、息を止められる。
思わずもがいた瞬間、布に染みこんでいたのであろう薬品を、思い切り吸い込んでしまった。
独特のにおいが鼻をついたと思った瞬間、ぐらりと視界が歪んだ。
体から力が抜けていく。意識が遠のいていく。
ああ、しまった……私、誰かがしかけた罠にはめられてしまったんだ……。