溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
良かった、やっと現場に出られる。
このまま訓練だけの毎日だったらどうしようかと思っていた。
すぐに出番があるだろうと言った新城さんの言葉は嘘じゃなかった。
「新城、大西、最重要事項はマルタイの安全確保だけど、紫苑ちゃんのフォローもよろしくな」
おっと……紫苑ちゃんって。
「もちろんです。いやー、紫苑ちゃんがいるだけで、警護が楽しくなるな」
大西さんまで。私なんかいたって、愛想もなにもないんだから楽しくなるはずないのに。
「バカ、いくら美人がそばに立ってたって、警護が楽しいわけないだろ。行くぞ」
隣で新城さんが立ち上がり、デスクの引き出しから必要なものを腰に装着していく。
私はそれを見て、慌てて上着を脱ぎ捨てた。
遅れをとるわけにはいかない。さらりと『美人』とほめられたからって、どきりとしている場合じゃない。
無線機や警棒、ホルスターをスーツの腰部分に装着していく。
腕時計をいつもの細いものから専用のスポーツタイプに変え、イヤホンを耳にかける。
さて、あとは保管庫から銃を持っていくだけ。
準備を終えて顔を上げると、すでに高浜さんと矢作さんは部屋からいなくなっていた。
無駄口を叩いていた大西さんも、既に上着を着ている。
さすが先輩だ。素早い。